皆様のおかげで、21回目の収穫を迎えられることとなりました。
おかげさまで、ナパ・ヴァレーの畑では、今年も無事収穫の時期を迎えました。今年は、天候に恵まれ、葡萄の成熟具合も非常に良く、まさにワイナリー開業15周年という節目の年に相応しい、実り豊かな年となりました。
私たちが、ナパ・ヴァレーの地でワイナリーをつくろうと決意したのが、1990年のことです。手付かずの山林だったこの地に何度となく足を運び、様々な人々の力を借りながら、夫婦二人三脚で、一から荒野を切り拓いて、畑をつくってまいりました。
そして、2001年には、残念ながら今は閉業してしまったフェニックス・ヴィンヤードのオーナー、デイブ・ベーダ－氏の力を借りて、遂に14万本もの葡萄樹の栽培に成功し、ワインの醸造までもを成し遂げることができました。しかし、デイブは、この畑を管理するのは自分ではないと私たちに伝えてきたのです。この畑が持つ無限の可能性を生かすには、自分では力不足だと感じていたのでしょう。私たちも、そんなデイブの思いを汲んで、彼とつくったワインを世に出すことはしませんでした。
そして、デイブに紹介されて出会ったのが、栽培家デイビッド・アブリュー氏です。彼との出会いによって、私たちは、自分たちの畑にある問題点を知ることになりました。それは、地中に埋まる大小の石塊を排除すること。健全な葡萄づくり、優れたワインづくりを目指すためには、それが不可避なことだったのです。
そこで私たちは、14万本もの葡萄樹をすべて抜き取る決断をしました。葡萄樹が見事に連なっていた土を掘り返し、あらゆる石塊を取り除いて、一から土壌をつくり直していったのです。それは、私たちにとって、苦渋の選択でした。しかし、この選択があったからこそ、私たちは、世界最高峰のワインづくりを目指すことを強く決意することができたのかもしれません。
そして、ふたりでワイナリーづくりを目指すようになってから十余年のときを経て、2005年に、私たちは、遂に、ケンゾー エステイトとしての初収穫を迎えることができたのです。あれから丸20年、良質なワインづくりにこだわり続け、そのエレガンスは、少しずつ世の皆様に愛されるようになってきました。そして今、皆様のおかげで、21回目の収穫を迎えられることとなったのです。
この20年間に、畑のテロワールはその個性を色濃くし、葡萄樹は成木へと成長を遂げてまいりました。いわば、ケンゾー エステイトにとって、これからが、本当の実力を発揮し得る新たなフェイズとなるわけです。そして、21回目となる今年の収穫は、その新たなフェイズの始まりだとも言えます。
そんなエポックとなる年に、私たちのワイナリーに、心から信頼できる友が戻ってきました。ワインメーカーのヘレン・ケプリンガーです。ヘレンは、そもそも、ケンゾー エステイトの初収穫からワイナリーが開業に至るまでの６年間、ハイディ・バレットやマーク・ネインズとともに、エステイト・ワインメーカーとして情熱を共にしてきた仲間でした。彼女は、自身のワイナリーをつくるために、一度ケンゾー エステイトを離れましたが、その後、無事に自身のワイナリーをつくり上げ、さらに様々な研鑽を積んで、今やナパ・ヴァレーを代表するワインメーカーに成長し、私たちの元へ戻ってきてくれたのです。
素晴らしい天候に恵まれた年に栽培された成木の葡萄樹の果実を使って、ケンゾー エステイトのテロワールを熟知したヘレンが、どのようなワインへと仕上げていってくれるのか、今からその出来上がりが待ち遠しくてなりません。そんな喜ばしい期待に胸を膨らませながら、これからも皆様とグラスを重ねていければ、これほど幸いなことはありません。どうぞ、これからも、ケンゾー エステイトのワインをご愛顧いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
ともに愉しい人生を。
追伸
過去20回の収穫を経て、成木へと育った葡萄樹には、艶やかな果実が実り、今年は、ケンゾー エステイトのさらなる発展への新たな一歩と思えるほど、豊かなハーベストシーズンとなることでしょう。この恵みを祝い、ワインで結ばれた皆様とのご縁を大切にしたいと考え、このハーベストシーズンのスローガンに、「縁（えにし）」という言葉を授けました。
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